怒らない子育てはなめられる? 親のストレスは?【保育士が答えます】

Q テーマ:叱り方の考え方

怒らない子育て、叩かない子育てとよく言われますが、それを実践すると、かえって親が子どもになめられて、主導権を握られてしまわないのでしょうか。それに、怒りたいのを我慢し続けることで、親のほうにものすごくストレスが溜まってしまう気もします。実際のところ、どうなのでしょうか。

A 保育士で三児の母がお答えします

とても本質的な疑問だと思います。結論からお伝えすると、この不安の正体は「怒らない子育て」という言葉が、少し誤解されて広まっていることにあります。怒らないことは、我慢することでも、叱らないことでもありません。ここを整理すると、なめられる心配も、ストレスが溜まる心配も、かなり軽くなります。順番に見ていきます。

「怒る」と「叱る」は、まったく別のものです

まず、いちばん大事なところです。よく混同されますが、「怒る」と「叱る」は違います。怒るとは、大人の感情をぶつけること。イライラや腹立ちを、大声や威圧で子どもに向ける行為です。一方、叱るとは、してはいけないことを、落ち着いて伝えること。感情ではなく、情報を伝える行為です。

「怒らない子育て」が本当に言っているのは、「叱るな」ではなく「感情的に怒鳴るのをやめよう」ということなんです。つまり、危ないことや人を傷つけることには、はっきり「だめ」と伝えていい。むしろ、伝えるべきです。ただ、その伝え方を、怒鳴る・叩くではなく、落ち着いた声と態度でやりましょう、という話なんです。ここを「一切叱ってはいけない」と受け取ってしまうと、たしかに子どもは際限がなくなり、親も我慢だらけになります。でも、本来の意味はそうではありません。

なめられる、主導権を取られる、という心配は、「叱らない」場合に起こることです。「怒らないけれど、だめなことははっきり叱る」なら、子どもはちゃんと線を理解します。むしろ、感情的に怒鳴るより、いつも落ち着いて毅然と伝える大人のほうが、子どもは安定して言うことを聞きます。園でも、大声を出す先生より、静かにはっきり伝える先生のほうに、子どもはよく従います。

なぜ「怒鳴る・叩く」だと、かえって効かないのか

恐怖は、その場しのぎにしかならない

怒鳴ったり叩いたりすると、その瞬間は子どもが言うことを聞くので、効いているように見えます。でも、これは理解して従っているのではなく、怖くて固まっているだけです。恐怖で頭がいっぱいになった子は、「何がいけなかったのか」を考える余裕がありません。だから、その場は止まっても、また同じことを繰り返します。しかも、繰り返すうちに恐怖に慣れてしまい、もっと強く怒鳴らないと効かなくなる。これが、怒鳴る子育ての行き着く先です。園でも、恐怖で従わせる関わりは、長い目で見るとうまくいかないことを、繰り返し実感します。落ち着いて理由を伝えるほうが、遠回りに見えて、実は子どもに深く残ります。

怒鳴られ慣れた子は、指示を聞き流すようになる

毎日怒鳴られていると、子どもはその声を「いつものこと」として受け流すようになります。すると、普通の声では届かなくなり、親はますます大声を出すことになる。この悪循環にはまると、親のストレスは減るどころか、どんどん増えていきます。逆に、普段は穏やかで、大事なときだけ声のトーンを少し変えて伝える。このメリハリがあるほうが、子どもは「今は本気だ」と敏感に察します。怒鳴らないことは、我慢ではなく、言葉を効かせるための戦略でもあるんです。

では、親のストレスはどうすればいい?

「怒らない」は「感情を我慢する」ではない

ここが、あなたの不安の核心だと思います。怒りをぐっと飲み込んで、笑顔で耐え続ける。それは確かに、いつか爆発します。でも、怒らない子育てが目指しているのは、我慢ではありません。そもそも、怒りが湧く前に対処する、というのが本来の形です。たとえば、イライラの原因になる場面を減らす、危ないものを最初から片付けておく、疲れているときは完璧を求めない。怒りを我慢するのではなく、怒りが湧きにくい状況を作る。これが、親のストレスをためない一番のコツです。

イラッとしたら、我慢せず一度離れる

それでも、人間なので怒りは湧きます。そのときは、我慢して笑うのではなく、その場を少し離れてください。子どもが安全な場所にいることを確認して、別の部屋で深呼吸する。数分離れるだけで、怒鳴らずにすむことがたくさんあります。これは逃げでも放置でもなく、感情的にぶつける前に自分を落ち着かせる、正しい方法です。園でも、どうしても気持ちが高ぶったときは、一度その場を離れて態勢を立て直します。我慢で抑え込むのではなく、距離で冷ます。このほうが、ずっと続けられます。

「怒らない子育て」を、「何をされても笑顔で受け入れる」と解釈してしまうのは避けたいところです。それは我慢の子育てで、親が消耗し、子どもも際限がなくなります。目指すのは、感情的に怒鳴らないことと、だめなことははっきり叱ること、その両立です。また、怒鳴ったり手が出たりしてしまった日があっても、自分をひどく責めないでください。大切なのは、完璧に怒らないことではなく、そうなってしまったときに「言いすぎたね、ごめん」と関わり直せることです。もし、怒りが抑えられない状態が続いてつらいときは、一人で抱えず、自治体の子育て相談窓口に話してみてください。

  • 「怒る」は感情をぶつけること、「叱る」は落ち着いて伝えること。この二つは別物
  • 「怒らない子育て」の意味は「叱るな」ではなく「感情的に怒鳴るのをやめよう」
  • なめられる心配は「叱らない」場合の話。だめなことをはっきり叱れば線は伝わる
  • 怒鳴る・叩くは恐怖で固まらせるだけで、繰り返すほど効かなくなる
  • 怒りは我慢するのではなく、湧きにくい状況を作り、湧いたら一度離れて冷ます
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このブログを書いている人
保育士資格保有|保育士歴10年以上|3児の母

大学で心理学を履修後、教育学部を経て保育士として働いています。心理学×教育の考えを元に育児の悩みに向き合っています。園で出会ったたくさんの親子と、我が家の毎日から学んだ「今日から試せること」をお届けします。

※本記事は一般的な子育て情報であり、専門的な相談に代わるものではありません。ご心配が続く場合は、自治体の子育て相談窓口にご相談ください。

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